DANCE HISTORY OF A MAN

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Dance History Of A Man
s.i.joe 04
「DANCE DANCE DANCE」のオーディションの準備をしているこの時期、S.I.JOEの従業員が一斉解雇になるという事件が起きた。

 

以前よりこの店のヘルプとしてカウンターで酒を作っていた、本宮氏がディスコ色の強い従業員を一斉に辞めさせ、彼自身が店長になるという改革を社長と計画しており、以前の店長、副店長など、役職が付いていた従業員、それからその後の目指す店舗カラーに合わないバイト連中まで一気にクビにした。

 

写真の様に営業時間が終わった後まで、従業員達との交流があった私にとっては複雑な思いだった。

 

ダンサーの登竜門と言われながらも、ヒップホップ色が強い従業員が1,2人しかいなく、ほとんどがディスコのナンパなイメージの従業員ばかりだったという事を打開し、新たに筋金入りの音楽好きや、DJ見習い、クラブ遊びに精通している人材などを集め始めた。
従業員を筆頭に、本当の意味でのヒップホップな店に変えるという計画だったようだ。

 

この時店長に抜擢されて、社長と同じ意識で改革を進めた人物、本宮氏は元々DJプロダクションMIDのスタッフで、S.I.JOE自体この「MID」のカラーが強い店舗と業界内では言われていた。
本宮氏はDJではなかったのだが、その業界で最前線で物事を見てきた事もあり、今回の改革のキーマンとなった。

 

この改革以前より私は本宮氏とは親しく、実はこの改革の件も以前より秘密裏に彼から聞かされ、色々と相談を受けていた。

 

そして、私もこの改革に巻き込まれる事となる。

 

バイトではあるが従業員にならないかと本宮氏よりオファーを受けたのである。

 

彼らが目指す店のコンセプトにピッタリ私の存在はハマったようだ。
この頃、ダンサーに対する知識を持つ者が少なく、大御所ダンサーが来店してもいわゆる接待もしない、というか気付かないという状況だった。
店的には、業界に精通するダンサー達を常連化する事により、そのジャンルの顧客も増えるという計算のだったようだ。
その様な事情に詳しく、更にストリート色の強い人材。
ヒップホップやダンスの色をより濃くする為には必要不可欠なポストだったらしい。

 

しかし、私は即決で断った

 

と言うのも、高校時代よりディスコで遊んでいた私は、ディスコ従業員の素行をリアルに見てきていた為に、自分もその様に見られることが許せなかったのだ。
賃金の安さ等の待遇面よりも、ディスコ、クラブの従業員の女性に対してナンパなマイナスイメージが私を留まらした。
正直、当時はダンサー自体も世間からはナンパ寄りなイメージで見られていた。そこにこの誘い・・・。

 

今考えてみれば、ほぼ毎日のようにこの店に入り浸っていた私にとって、従業員だろうが客だろうが関係ないといえば関係ない・・・
と言うよりも少しでも同じ時間で金を稼いだ方が良いものだ。

 

しかし、この改革の中軸の一つとして本宮氏はどうしても私を必要としてくれていたらしい。

 

数日後、彼は私にとんでもない提案をしてきたのである。
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