DANCE HISTORY OF A MAN

0066_軌道修正

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Dance History Of A Man
さて、先輩方との初のコラボレーションとなるショー当日が訪れた。

 

ところが、とんでもない事件が起きる。

 

夕方からの現場でのリハだったのだが、朝起きると身体が動かない。
頭痛と吐き気を併発していた。
どうやらここ最近のショー、バイト、練習等でのハードスケジュールで身体がおかしくなっていたようだ。
気持ちは現場に向かう為の準備をしたいのだが、どうしても身体が言う事をきいてくれない。

 

私はすぐにCHIZUKOに連絡を入れ、リハーサルの不参加を願い出た。
電話の向こうで「何時に来れる?」とだけ。
私は少し余裕を考えた時間を設定して、現場に向かった。
当時、ディスコとして有名だった六本木のシパンゴである。
現場に到着するまでの間に薬などの作用もあり、体調はだいぶ回復していた。

 

店内に入ると既にリハーサルは終了していた。
メンバー達に謝罪をした後、CHIZUKOに呼び出された。

 

彼女は重々しく口を開いた。
GO、お前の代わりはいくらでもいるんだよ。
体調のせいにすれば許されるなんて、そんなにこの業界甘くないよ。
お前1人欠けたくらいでリハが出来ない事なんてないけど、お前はそれで良いの?
最近ショーの仕事も増えて、頑張ってるみたいだけど、自分の出来る範囲以上に請け負ってるんじゃない?
今回は私がフォローしたから良かったけど、こんな仕事の仕方をしていたらすぐに干されるよ。
自分の能力をもっと自覚してスケジューリングした方が良いんじゃない。」

 

・・・・・・一切反論出来なかった。

 

以前、「ギャラを貰うからにはプロ」という意識が芽生え、自分の中で意識改革が起こったと思っていたが、まだまだ甘かった。
全てが、彼女の言葉通り・・・
「あれもやりたい、これもやりたい」になっていて、基本的な認識が甘かった。

 

色々な仕事の話をもらえるのは、全てがチャンスに繋がるので有難い事だ。
しかし、今回のように自覚しないうちに身体を酷使して、リハや本番に穴を空けた場合、チャンスどころか、信頼まで失う事になる。
信頼を失えば、確実に「次」は無くなる。
あらゆる面で自分自身を理解する事と、自分の器を越え過ぎる責任を負わない事を改めて思い知らされた。
過度なショー出演が、当時の我々のスキルを大きく超えている事を彼女は指摘してくれたのだ。

 

また、彼女の言葉は業界の厳しさを改めて私に訴えたモノだった。
言い訳は一切きかない。代わりはいくらでもいる。
そして理由はどうあれ、遅刻して自分だけリハに参加しない事は、何よりも先輩方に対して失礼な事であった。

 

彼女はまたしても、道を外しそうになっていた私を導いてくれたのだ。
当時もそう思ったが、今考えても本当に有難い言葉を貰った。

 

話が一通り終わった後、今度は彼女がにっこり笑って、
「よし、じゃあ説教はここまで!もう充分わかったんだろう?こっからは良いショーをやる為に、そっちに気持ちを持っていきなっ!体調は平気?」
私は、こんな人間になろうと思った。

 

ショー本番は、DATZの2人とCHIZUKOが上手くリードしてくれたのを憶えている。
今までのショータイムよりも、全てがスムーズに気持ち良く行われた。
本番においても、大きな「経験の差」というモノを感じた。

 

因みにこの時、もう1チームゲストダンサーが呼ばれていた。
このブログでも紹介した「DANCE DANCE DANCE」2回目の特番のチャンピオン
YOHEI氏、SHIGE氏、ARAKAWA氏の「ソルジャー」だった。
ショーを始める前に、控え室でお互いを奮起させてるうちに彼らとも親密になっていった。

 

全てが終わった後、改めてこの日の出来事を出演者全員に謝罪した。
そして私は、改めて目標に向かっての進むべき道を再確認したのであった。
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