DANCE HISTORY OF A MAN

0079_様々な思い

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Dance History Of A Man
mikiakko
S.I.JOEの最終営業日に、我々はダンスショーを行う事となった。
当時の素晴らしいパフォーマー達が活躍してきたこの店の閉店時に、駆け出しダンサーの我々がショーを行うなど通常は考えられない事であったが、
我々JAZZ BOOのこの店に対する気持ちを良く知る、店長本宮氏の有難い計らいだった。

 

JOEがなくなる事によって、活動の場所を探す事になる我々には、ある意味プロモーションの機会でもあった。
まあ、当時としてはそんな事よりも、とにかく店に対しての感謝の気持ちを出来る限りの事で表現すると言う理由が一番であったが・・・。
とは言え、我々の大きな転機には違いない。

 

更に、ヘルプで踊ってくれていたAKARIに代わり、この時より女性メンバーを二人補強。
我々と同じように、S.I.JOEで育ち、店に対しての思いも同じ仲間達。
後々、大切な時期を共に過ごす重要な仲間となる。MIKIAKOだ。
彼女達の参加により、MEGU一人が担ってきた女性ならではの表現法も広がる事になり、他の意味でもチーム全体の層が厚くなる事を期待したものだった。

 

新メンバー二人の加入と言う事もあり、この時は過去に披露してきた様々なショーパッケージを一切使わずに、
色々な意味で新たなるスタートを意識して、新ネタを2曲用意する事となった。
一つはニュージャックスイングから現在で言う所のミドルスクールのヒップホップスタイルを男性3名で構成。
そして、もう一つは我々としては初めて本格的に取り組む事となるロッキンを名曲「PUMP ME UP」を使い、メンバー全員で踊る事にした。
楽曲編集は、今までお世話になっていたJOEのDJ陣ではなく、旧友でこの頃DJとして活躍し始めていたDJ WAKAが担当する事となった。

 

期待と不安が交錯しながらもショーの準備を進める私達に、重ねてショックな事が訪れる。

 

チーム結成当初から一緒に頑張ってきたササボーが今回のショーを最後に脱退を表明した。
ダンスに力を入れる事により、本職というか、彼の本来の居場所であるBMXの世界での活動が止まっていた。
将来的にその世界での野望を抱いていた彼にとっては、かねてよりその件で悩んでいたようだ。
ダンスとBMX、どっちを取るとかそんな事ではなく、双方を愛するからこそ、中途半端ではいけないという彼の決断だった。
今回JOEのラストと言う事もあり、これを機と感じたのであろう。

 

私個人としては、高校時代からの仲間で、彼以上に信頼できる男はいなかった。正直、誰よりもショックを受けたのは私自信だったと思う。
しかし、ダンスに熱中しながらも、本来の居場所を忘れずに、その世界にチャレンジしていこうとする彼の姿は、ダンス界に挑んでいる私自信の姿に重なる。
私のわがままで、彼を止める事など出来るはずはない。むしろ、誰よりも彼を応援しよう思うことが出来た。

 

ササボーは最後だからと言って、手を抜く男ではない。しかも、JOEに捧げる事になる最後のダンス。
今まで以上に彼は練習に力を入れた。

 

様々な事情と思いを抱いて伝説のクラブの閉店の日が近付いていた・・・。

 

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